意識の制限

私たちの神経系が一度に処理できる情報の量には、明確な限界があります。意識にのぼり、意味づけられる出来事の数は限られており、それを超えると互いに干渉し、混乱が生じます。
人が何かを考えているときには、感情を深く味わうことは難しくなります。思考と感情はどちらも注意のリソースを必要とし、それを同時に分け合うことができないからです。また、走ったり歌ったり、お金の計算をしたりといった活動は、それぞれが多くの集中力を要するため、同時に行うことはできません。
現在の科学的知見では、人間の脳が一瞬で意識的に処理できる情報の数は、およそ7つ程度だとされています(これは短期記憶の「マジックナンバー7」にも通じます)。そして、ある情報のまとまりと別のまとまりを識別するために必要な最小の時間は、約0.056秒(1/18秒)です。
この処理速度をもとに計算すると、人は1秒間におよそ126ビットの情報を処理できることになります。つまり1分あたり約7,560ビット、1時間では45万ビット、1日16時間活動していれば1日720万ビット――そして、70年の人生でおよそ1850億ビットもの情報を処理できることになります。
一見すると、これは膨大な量に思えます。しかし、この総量の中で、私たちはすべての思考、記憶、感情、行動を行わなければなりません。つまり、人の心には限られた「容量」しかないということです。
しかも、多くの人はこの能力を十分に使いきっていません。たとえば余暇の時間――仕事や義務から解放された自由な時間でさえ、多くの人はあまり集中力を要しない活動、つまりテレビを見たり、人と軽く話したり、雑誌をめくったりして過ごします。これらは、脳にとってあまり刺激的ではなく、大きな注意力を必要としません。
実際には、人が意識的に経験する情報の総量は、理論値よりもはるかに少ないのが現実です。
いずれにしても、人生で経験できることには限りがあります。だからこそ、「どんな情報に意識を向けるか」が非常に重要なのです。意識に取り入れる情報こそが、その人の人生の内容と質を決定するからです。